生物?環境

熱帯-中高緯度相互作用が日本に梅雨明けをもたらす

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(Image by Grey Zone/Shutterstock)
 フィリピン東方海上の降水域が7月下旬に急激に北東方向へ拡大する対流ジャンプ現象は、関東以北の梅雨明けに深く関係しています。対流ジャンプが中緯度?対流圏上層からの影響を受けて発生するメカニズムを解明しました。夏の気候形成における熱帯と中高緯度の相互作用の重要性を示す成果です。

 日本の関東以北の梅雨明けは、7月下旬にフィリピン東方海上の積雲対流活動が活発な領域(いわゆる降水域)が急激に北東方向に拡大する"対流ジャンプ(convection jump)"現象の影響を受けて生じることが知られています。この対流ジャンプ発生領域を含む西部北太平洋亜熱帯域では、中緯度の対流圏上層から低気圧性渦で安定度の低い空気塊(高渦位空気塊)が亜熱帯域へ侵入する影響を受けて、積雲対流活動が活発になることが指摘されてきました。しかし、対流ジャンプの発生時における中高緯度からの影響については、十分な議論が進んでいませんでした。

 本研究では、過去に発生した20事例の対流ジャンプについて解析しました。その結果、対流ジャンプ発生時には日本の東海上で偏西風が大きく蛇行しており、発生領域付近の対流圏上層に中高緯度から持続的で大規模な高渦位空気塊の流入がみられました。低気圧性循環を検出?追跡可能な手法により、流入した大規模な高渦位空気塊は、中緯度の対流圏上層に存在する大規模な気圧の谷から切離したものとして捉えられました。また、高渦位空気塊の流入は力学的に上昇流を強化?維持するように働き、対流ジャンプ発生領域での積雲対流活動の活発化に影響することが分かりました。

 これらの結果は、対流ジャンプが、これまでの研究で指摘されてきた亜熱帯の高い海面水温に起因する大気と海洋の結合作用の効果に加え、対流圏上層の高渦位空気塊が中高緯度から亜熱帯へ侵入したことによる力学的な効果を受けて発生することを示しています。

 梅雨期から盛夏期にかけてのこのような季節進行のメカニズムを、熱帯-中高緯度相互作用の視点から詳細に検討することで、季節予報の精度向上や現象理解に貢献することが期待されます。

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プレスリリース

研究代表者

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植田 宏昭 教授

掲載論文

【題名】
Summertime convection jump over the subtropical western North Pacific and its relation to Rossby wave breaking near the Asian jet exit region
(夏季西部北太平洋上の対流ジャンプとアジアジェット出口付近におけるロスビー波の砕波との関係)
【掲載誌】
Journal of Meteorological Society of Japan
【DOI】
10.2151/jmsj.2025-001

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