生物?環境

原生生物Glissandraの再発見により未解明系統CRuMsに共通する特徴を解明

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 パラオ共和国の海水湖で採集されたサンプルから、真核生物の系統の一つCRuMs(クルムス)に属する新種の単細胞生物を発見し「Glissandra oviformis」と命名しました。また、この生物の構造を電子顕微鏡で観察したところ、CRuMsに属する他の生物と共通する形態的な特徴が明らかになりました。

 原生生物(動物?陸上植物?菌類を除く真核生物)は、真核生物の系統樹の大部分を構成しているため、真核生物の進化を理解する上で、それらの多様性の解明は重要な鍵となります。しかし、微小であることや培養の難しさから、その理解は依然として不十分です。

 本研究では、パラオ共和国の海水湖で採取された海藻表面のサンプルから、原生生物の培養株を確立しました。顕微鏡観察の結果、本生物は、その存在は知られているものの、これまで系統的位置が不明となっていたGlissandra 属の新種であることが分かり、これを「Glissandra oviformisG. oviformis )」と命名しました。340個のタンパク質配列に基づく大規模分子系統解析により、G. oviformis は真核生物の主要な系統の一つであるCRuMs(クルムス)の新規系統であることが明らかになりました。CRuMsは形態的に多様な原生生物から構成されており、共通する特徴はこれまで不明でした。CRuMs内部での形態形質の進化を明らかにするために、G. oviformisについて電子顕微鏡観察を行ったところ、細胞膜を裏打ちする膜状の構造や鞭毛の根本の構造がCRuMsに属する他の生物と共通していることが分かりました。

 本研究により、CRuMsを構成している原生生物の間に、共通の形態的特徴があることが示されました。このように、系統樹の中での位置付けが不明なままになっている原生生物を、環境中から再発見し、培養株を確立して詳細に調べることは、真核生物の進化を理解するための重要な手法であると考えられます。

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プレスリリース

研究代表者

狗万app足彩,狗万滚球 生命環境系
白鳥 峻志 助教

国立研究開発法人農業?食品産業技術総合研究機構(農研機構)
基盤技術研究本部 高度分析研究センター
矢﨑 裕規 研究員

掲載論文

【題名】
Glissandra oviformis n. sp.: a novel predatory flagellate illuminates the character evolution within the eukaryotic clade CRuMs.
(新奇捕食性鞭毛虫Glissandra oviformisが真核生物のクレードであるCRuMsの進化を明らかにする)
【掲載誌】
Open Biology
【DOI】
10.1098/rsob.250057

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