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TSUKUBA FUTURE #043:スポーツは練習のみにあらず?アスリートを支える栄養と骨の話

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体育系 麻見 直美(おみ なおみ) 准教授


 丈夫な骨にはカルシウム、というのは過去の常識です。骨の健康には他の栄養素や運動も大きく関わっていることがわかってきました。体の組織の中でも比較的代謝の遅い骨には、全身の健康状態が反映されます。そのため、骨密度など骨の情報から、その人の栄養状態や生活習慣を大まかに把握し、健康管理やアスリートのからだづくりに貢献することができます。


 では骨を丈夫にするための食事はどうあるべきなのか。それが麻見さんの研究のスタートでした。骨を強くするための栄養と運動の関係を研究していたちょうどその頃、スポーツの世界で、アスリート向けの食事管理支援のニーズが生まれてきました。現在は、より多くのアスリートを支援するために、競技サポートをする指導者や栄養士たちへの情報提供に力を入れています。


 アスリートは、日々の練習で、普通の人の倍以上のエネルギーを消費します。けれども、一度に胃に入る量は限られているので、食事量を単純に倍にすることはできません。食事の回数を増やして、少しずつでも毎度バランスよく食べるようにするのが肝心です。競技ごとに目指す体格も異なりますし、体調のピークをシーズンに合わせるための調整も必要です。選手生活を続けていると、ホルモンバランスの崩れや精神的ストレスなどが原因で、骨が衰え不調に陥ることもあります。それらに対処する基本も食事。アスリートの体を維持?強化する上で、栄養や食品、調理の専門知識が不可欠です。


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 食事の指導をするにはまず、それまでの食事状況を評価します。特にジュニアや大学生のアスリートは、自分で調理はしませんし、栄養に関する知識のレベルもまちまちです。食べたものを細かく書き出すだけでも負担になります。麻見さんは、食べ方の傾向をいくつかのカテゴリーに分け、簡便な質問票を使って判定する評価システムを研究室に所属する大学院生達と一緒に開発しています。これによって、栄養素ごとの摂取量を細かく測らなくても、栄養的に望ましく、競技へのモチベーションにもつながるような食べ方を、個別に提案できるようになりました。


骨密度の実験用測定装置

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 バスケットボールに打ち込んでいた思春期に貧血で苦しんだ経験が、麻見さんを管理栄養士の道へと導きました。バランスの良い食事を十分に摂っていても、急激な体の成長に、血液成分の増加が追い付かずに貧血を起こします。そういう仕組みを実学として学びたいと思い、栄養学を選びました。なかでも骨の研究は、アスリートの食事支援やスポーツドリンクの開発から、高齢化に伴って増加する骨粗しょう症や動脈硬化のメカニズム解明、宇宙飛行士が無重力空間で行うトレーニング効果の分析まで、いろいろな分野に広がっています。しかもそれらが互いに関連している、とても奥深い領域です。


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 麻見さんは、授業や体組成測定なども行う栄養サポート、ニュースレターの発行などを通じて、日常的に学生向けの基礎的な食情報を発信しているほか、学食の改善にも取り組んでいます。多くの学生にとって、学食は栄養補給の砦。メニューや価格設定はもちろんのこと、空間デザインの工夫、イベントの開催など、総合的な食育の場として、学食の運営は分野を横断した大規模な研究プロジェクトになり得ます。設備面などクリアすべき課題もありますが、教材としても使える食堂を実現させたいと願っています。


 「これさえ食べれば大丈夫」という食品はありません。体はとても複雑なメカニズムで、その時々の状態を検知し、栄養素の吸収や排出を巧みにコントロールしています。骨の健康を意識して生活すれば、結果的に全身の健康が保たれます。一方で、食事に神経質になりすぎるのも禁物。アスリートだって、時にはお菓子も食べたいでしょう。カロリーを気にして、揚げ物の衣を外して食べるのもつまらない。大切なのは、1日あるいは1週間といった期間の中でバランスをとることです。特別な知識がなくても、主食?主菜?副菜という献立を心がけるだけで、ある程度バランスよく栄養素を摂取することができます。食事は楽しむことが一番というのが、麻見さんのモットーです。アスリートだけでなくみんなに、食べ方について少しでも考えるという習慣を広めたいと思っています。


文責:広報室 サイエンスコミュニケーター


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