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TSUKUBA FUTURE #070:自分のハードルを越えろ!自分を変える選手育成

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体育系 谷川 聡 准教授


 陸上競技のハードル走では、10台のハードルを飛び越えながらタイムを競います。速い走りだけでなく、ブレーキをかけて体を折りたたみながらジャンプするという複雑な動きに加え、同じ動作を正確に繰り返す技術も求められます。ハードルの間隔と高さは固定されているため、それに適した体格と体力も必要です。男子の場合、体の重心や筋腱のバランスなどから、身長は190cmぐらい、体も短距離選手より二回りほど大きいことが世界トップレベル選手の条件です。


 スポーツ大好き少年だった谷川さんは、最初、プロ野球選手にあこがれていました。しかし個の実力がものをいう個人種目に興味をもち、中学校では陸上競技と水泳を選びました。最初は誰もが挑戦する100m走を考えていましたが、先天性の股関節脱臼の違和感から、ハードル向きだとわかりました。しかし、地区大会でも優勝できず、高校まではさほど熱心ではなかったそうです。一般入試で進学し、1年間の仮入部で入った大学陸上部では練習についていくのがやっと。そこで、推薦入学の部員たちの中で成功している選手は何が違うのか、ひたすら観察して考えたそうです。すると、そうした観察が功を奏し、大学3年生で実力が突如開花。当時のトップ選手だったカール?ルイスなどのフォームをビデオで研究したり、専門的なトレーニングを見よう見まねで行っているうちに、競技成績はみるみる向上しました。


 しかし、本格的に練習するにつれ、体のしくみやトレーニング方法など、理論的な面でも学ぶべきことが多いと実感するようになりました。さらに股関節のハンディから体のことをきちんと知りたいと考えていたこともあり、内定していた就職を蹴って、狗万app足彩,狗万滚球大学院への進学を決めました。大学院では短距離走と跳躍のコーチの元で練習し、海外の指導書も読んで精力的に勉強しました。さらに2年目の1年間はアメリカやドイツを巡り、多くのコーチの指導を受け、試合に出るなどの武者修行も。


 アスリートにとって、他者を観察する「見取り稽古」は、自分自身の研究につながります。同じ食事、同じトレーニングでも、効果の現れ方は異なります。自分をよく知ることは、課題を自らの力で解決するための第一歩です。高校までは、与えられた指導を素直に受け入れ、練習メニューを計画通り実行することに専念してきた選手たちの意識を変え、自分の頭で考え、自身で問題解決できるアスリートになって、気付きを得られるようにシフトさせるのが、谷川さんのコーチングです。選手やトレーナーからスマホで送られてくる体調や練習のデータをチェックし、グラウンドに来る姿やウォーミングアップをきめ細かく観察して、個別にコミュニケーションを取りながらチーム全体のコーチングもします。競技力だけでなく人間力の向上も同時に目指し、自力で問題解決ができるようになると、競技だけでなくさまざまなことに積極的に取り組むようになります。


陸上競技部の監督として、個々の選手のさまざまな要因を
考慮に入れて個性を考えながら練習方法やチーム編成を練る。


競技の種類によって使う動き、認知、トレーニング歴を分析し、
それに合ったトレーニングを開発するには、 学際的な研究が欠かせない。
その点で狗万app足彩,狗万滚球は理想的な環境だと語る。


 シドニーとアテネ、2度のオリンピック出場を果たしたハードル走の第一人者。アテネで出した日本記録は未だに破られていません。選手を引退した後のキャリアには様々な可能性がありましたが、選んだのは研究者?指導者の道でした。オリンピックでの決勝進出という目標が達成できなかった口惜しさや、ケガで苦しんだ経験が、様々な学問領域の研究からトレーニング?コーチングに活かせる知を集積し、選手育成の方法を突き詰めたいという思いを強くしたのです。コーチングは、トレーニング論、心理学、脳科学、医学などなど多くの分野が関係する複合領域なので、まさに学際研究のメッカ狗万app足彩,狗万滚球の本領発揮です。


 走る、跳ぶというハードル競技の基本は、他のスポーツにも共通しており、学内外、国内外を問わず、野球、ラグビー、サッカーやテニスなどの選手も谷川さんの指導を求めて狗万app足彩,狗万滚球にやってきます。そしていつしか、自分を高め、競技力も人間力も一回り大きくなって自分で自分の舵取りをできるようになり、新たなる環境を求めて巣立っていきます。スポーツに限らず、自分らしさを認識できたら次の段階へ進むのは不可欠なこと。環境が変わると新たな気付きが生まれ、また一歩、成長するのです。谷川さんは、自分自身にも再びそういう時期が訪れることを予感しています。


文責:広報室 サイエンスコミュニケーター


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