医療?健康
ストレス時に血液循環を調節する神経機構を発見 ~外側手綱核はセロトニン系を介して自律神経性に血液循環を調節する~
(Image by Ekaterina Karpacheva/Shutterstock)
小金澤 禎史 助教
松本 正幸 教授
ヒトはストレスに対峙した時、すくんだり逃げたりするなど、その行動を変化させます。それと同時に体内では、ストレスに対応してさまざまな生体反応が引き起こされます。例えば、血圧や心拍数のような体内の血液循環をコントロールする上で重要な要素が変化することが知られています。このような自律神経系の血液循環調節は生命を維持する上で極めて重要で、その異常は自律神経失調症などの病態へとつながることがあります。このため、ストレス環境下における自律神経性の循環調節機構の研究が世界的に進んでいます。
本研究では、ストレス性の刺激に対して興奮するニューロンが存在していることが知られている脳領域である外側手綱(たづな)核に着目し、ラットによる実験で、その血液循環調節機構を解析しました。その結果、自律神経系による心臓や血管への働きを薬物で抑えると、外側手綱核を興奮させても血圧や心拍数の変化が抑えられることが分かりました。さらに、脳内の神経伝達物質であるセロトニンによる神経伝達を阻害した際も、外側手綱核の興奮による血圧や心拍数の変化が抑えられることが明らかになりました。以上のことは、外側手綱核が自律神経系の活動を調節することにより体内の血液循環を調節しており、脳内のセロトニン系がその調節を仲介していることを示唆しています。
ストレス環境下における血液循環を調節する神経回路の研究をさらに進めることは、ストレス環境下の行動と生体恒常性維持機構を総合的に、より深く理解することにつながります。ストレスが原因の一つとして考えられる自律神経失調症の新しい予防法?治療法開発に貢献することも期待されます。
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松本 正幸 教授