医療?健康

ゲノム編集をより効果的かつ安全に行うための造血幹細胞培養技術を開発

研究イメージ画像 (Image by pogonici/Shutterstock)

 造血幹細胞は、骨髄に存在する希少な細胞で、赤血球、白血球、血小板を産生します。この細胞が正しく機能することは、生体の成長と健康に不可欠です。造血幹細胞のDNAに変異があると、血液細胞の産生に障害が生じて、重篤な遺伝子疾患を引き起こす可能性があります。


 CRISPR/Cas9技術を用いるゲノム編集により、このような疾患の原因となる変異の修正(機能の回復)が可能となり、この造血幹細胞を移植して疾患を治療することができるようになりました。しかし、ゲノム編集ではごく一部の細胞の変異が修正されるだけであり、他の細胞に新たな変異が導入される可能性があります。このことから、修正された造血幹細胞のみを選択的に移植することが望ましいです。


 この問題に対し、本研究では、高分子ポリマーを用いた新しい造血幹細胞培養システムを開発しました。免疫不全疾患マウスの造血幹細胞における疾患変異をCRISPR/Cas9で編集した後に、本システムを用いて個別に増幅させました。1個の細胞から増えた造血幹細胞コロニーをスクリーニングして、目的の修正編集のみを含む、生着能力が高いコロニーを選択して免疫不全マウスに移植したところ、免疫細胞の再構築が認められ、免疫系の正常な機能も確認できました。この方法により、変異が修正された造血幹細胞の割合が、20-30%からほぼ100%に上がり、移植の際に、危険な変異を持つ細胞を除外することが可能になりました。


 この培養システムは、造血幹細胞におけるゲノム編集の効率と安全性の向上に貢献すると期待されます。


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プレスリリース

研究代表者

医学医療系
山崎 聡 教授

掲載論文

【題名】
Controlling Genetic Heterogeneity in Gene-edited Hematopoietic Stem Cells by Single Cell Expansion.
(ゲノム編集を行った造血幹細胞における遺伝的不均一性に対するクローン増殖システムの開発)
【掲載誌】
Cell Stem Cell
【DOI】
10.1016/j.stem.2023.06.002

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