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急性腎障害下でマクロファージが炎症性の脂質を制御する仕組みを解明

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(Image by sasirin pamai/Shutterstock)
 急性炎症では、脂質メディエーターと呼ばれる生理作用を持つ脂質が炎症の促進、抑制において重要な役割を果たします。本研究では、脂質メディエーターを産生するマクロファージが、急性腎障害において、脂質メディエーターを炎症促進性から抑制性へと変化させる分子メカニズムを解明しました。

 急性腎障害は重篤な予後につながるにも関わらず、その根本的治療法は確立されておらず、急性腎障害の悪化を防ぐ仕組みの解明は喫緊の課題です。急性腎障害においては、脂質メディエーター(生理作用を持つ脂質)を産生するマクロファージと呼ばれる免疫細胞が、炎症の促進と抑制の両方に大きな役割を果たすため、その機能の理解が重要です。

 本研究では、マクロファージの炎症抑制能を制御することが報告されている転写因子MAFBに着目し、急性腎障害におけるマクロファージの機能を解析しました。マクロファージ特異的にMafbを欠損するマウスに急性腎障害を誘導したところ、野生型に比べ予後が悪化しました。これらのマウスのマクロファージの遺伝子発現を網羅的に解析した結果、Mafb欠損マウスのマクロファージではAlox15と呼ばれる遺伝子の発現が顕著に減少していました。ALOX15は炎症抑制性の脂質メディエーターの産生に必須の酵素です。さらに、急性腎障害下のマクロファージにおけるMAFBの発現は、PGE2と呼ばれる炎症促進性の脂質メディエーターにより制御されており、MAFBはPGE2の制御下でALOX15の発現を制御することが分かりました。以上のことから、MAFBは、炎症促進性脂質メディエーターから炎症抑制性脂質メディエーターへの切り替えの鍵となるタンパク質であることが明らかとなりました。

 炎症促進性と炎症抑制性の脂質メディエーターのバランスは急性炎症の予後に非常に大きな影響を及ぼすため、本研究成果は、急性腎障害を始めとした急性炎症性疾患の治療法、診断法の開発につながることが期待されます。

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プレスリリース

研究代表者

狗万app足彩,狗万滚球医学医療系
濱田 理人 准教授

掲載論文

【題名】
MAFB in macrophages regulates PGE2-mediated lipid mediator class switch through ALOX15 in ischemic Acute Kidney Injury
(マクロファージのMAFBはALOX15を介して虚血性急性腎障害におけるPGE2媒介脂質メディエータークラス転換を制御する)
【掲載誌】
The Journal of Immunology
【DOI】
10.4049/jimmunol.2300844

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