人工呼吸器管理を受けた高齢患者の予後をつくば市の医療介護データより解析

医療介護データの解析から、気管挿管を伴う人工呼吸管理を受け3日を超えて生存した高齢患者の多くは、その後、人工呼吸器を外せていたことが判明しました。一方、要介護3以上の高齢患者では入院期間が長引きがちで、そのデメリットも踏まえて治療方針を相談することが望ましいことも示されました。
人工呼吸器を使った治療をするかどうかを決める時には、その後の見通しについての情報がとても大切になります。しかし、人工呼吸器での治療を受けた高齢の患者さんのうち、どのくらいの方が器械を外すことができているのか、また退院できているのかについては、これまであまり報告されていませんでした。そこで本研究では、つくば市の医療介護データ(2014年4月から2019年3月まで)から、口や鼻からのどに空気を送る管を入れる気管挿管を行い人工呼吸器を装着された65歳以上の高齢患者を対象に、どれくらいが人工呼吸器を外せたのか、退院できたのかについて調べました。
対象となった高齢患者は272人(手術目的で人工呼吸器を装着した患者、装着から3日以内に亡くなった患者は除く)でした。73.5%の方が180日以内に人工呼吸器を外すことができ、また42.6%が180日までに退院できていました。一方、37.5%が180日以内に亡くなっており、19.9%は180日を経ても入院していたことが明らかになりました。年齢や要介護度で分けて比較すると、年齢別では人工呼吸での治療期間や入院期間に差はみられませんでしたが、要介護度3以上の患者の場合、それ以外の患者と比べて180日後も入院している割合が高いことも明らかになりました。
このように、気管挿管による人工呼吸管理を受け3日を超えて生存した高齢患者の多くは、呼吸器を外すことができていました。しかし、要介護度が高い患者では入院が長引く場合が多いことも明らかとなり、長期入院によるデメリットも踏まえた対応が必要であると考えられました。患者さんや家族と医師が治療方針について相談する際には、器械を外せるかどうかだけではなく、その後の体機能の低下や、望まない結果になるような可能性についてもよく考えて話し合うことが大切になると思われます。
PDF資料
プレスリリース研究代表者
狗万app足彩,狗万滚球医学医療系/ヘルスサービス開発研究センター田宮 菜奈子 教授
狗万app足彩,狗万滚球ヘルスサービス開発研究センター
坂本 彩香 客員研究員(研究当時:狗万app足彩,狗万滚球医学学位プログラム(博士課程))
掲載論文
- 【題名】
-
Liberation and Discharge Status of Older Patients After Invasive Mechanical Ventilation: A Retrospective Cohort Study.
(高齢者における侵襲的人工呼吸後の離脱と退院状況:後ろ向きコホート研究) - 【掲載誌】
- BMC Geriatrics
- 【DOI】
- 10.1186/s12877-025-05963-0
関連リンク
医学医療系ヘルスサービス開発研究センター