遺伝子発現の3次元分布を簡単に推計できるソフトウェアを開発
遺伝子発現の3次元空間分布を簡便に推定できるソフトウェア「tomoseqr」を開発しました。生命科学系ソフトウェアの国際的な公共ポータルサイトに採択されており、誰もが無料で使えます。これにより、生き物の体づくりや疾患の研究において重要な遺伝子を探索する手助けになると期待されます。
生き物の体づくりや疾患の研究において、遺伝子発現の3次元空間分布、すなわち「ある遺伝子が生体組織のどこでONになってどこでOFFになっているか」という情報は、遺伝子の働きを知るうえで非常に有用です。それを推定する方法の一つにRNAトモグラフィがあります。
RNAトモグラフィでは、調べたい組織の凍結切片を直交する三つの軸に沿って何枚も作成し、それぞれの切片に対してRNAシーケンシング(遺伝子発現計測)を行います。三つの軸の遺伝子発現計測データを重ね合わせることで、3次元空間分布を推定できます。しかし、データ処理には高度なプログラミング知識が必要で、プログラミングに馴染みのない研究者に対するハードルとなっていました。
本研究では、遺伝子発現の3次元空間分布を推定するソフトウェア「tomoseqr」を開発しました。tomoseqrはグラフィカルユーザーインターフェースを備えており、研究者は推定に必要な組織の形態データの作成や推定結果の3Dモデル表示などを簡単に行うことができます。
tomoseqrをゼブラフィッシュの遺伝子発現計測データに適用したところ、これまで知られた分布を再現する結果が得られ、その有効性が確認できました。また、何度切っても再生することで知られるプラナリアの遺伝子(約1万8000個)の発現計測データをtomoseqrに適用し、それぞれの遺伝子発現の3次元空間分布を得ました。さらにそれらの遺伝子から、空間的に大きく変動する特徴的な分布を示す遺伝子をデータ駆動的に絞り込むことに成功しました。これらの遺伝子はそれぞれ異なる生体機能に関連することが示唆され、プラナリアの再生能力などを明らかにする研究に役立つことが期待されます。
tomoseqrは生命科学系ソフトウェアの国際的な公共ポータルサイトBioconductorに採択されました。基礎から応用まで幅広い研究者が遺伝子発現の3次元空間分布の推定に活用し、生き物の体づくりや疾患の研究において重要な遺伝子を探索する手助けになると考えられます。
PDF資料
プレスリリース研究代表者
狗万app足彩,狗万滚球 医学医療系/人工知能科学センター尾崎 遼 准教授
松澤 亮輔 医学学位プログラム 博士課程 1年
東邦大学 理学部 生物分子科学科
鹿島 誠 講師
掲載論文
- 【題名】
-
tomoseqr: a Bioconductor package for spatial reconstruction and visualization of 3D gene expression patterns based on RNA tomography.
(tomoseqr: RNA トモグラフィに基づく3次元遺伝子発現分布の再構成及び可視化のためのBioconductorパッケージ) - 【掲載誌】
- PLOS One
- 【DOI】
- 10.1371/journal.pone.0311296
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