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脳は予想外の痛みをより強く知覚する

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(Image by Ticketcraft/Shutterstock)
 脳が痛みを感じる仕組みを調べるため、仮想現実(VR)の環境を用いて、視覚的な脅威や熱刺激を使った実験を行いました。その結果、脳は予測した痛みが現実とずれているときに、痛みを強く知覚していることが分かりました。特に、予想外の出来事が発生すると、痛みが増幅されることが確認されました。

 私たちは、ケガや体の不調のとき、痛みが予想以上に強く感じられることがありますが、同じようなケガでも、あまり痛くないと感じることもあります。このように、痛みの感じ方は、予測や思い込みにも大きく左右されます。

 脳が痛みを感じる仕組みとして、2つの仮説が提唱されています。1つ目は「推定仮説」で、脳が予測(思い込み)に基づいて痛みの強さを推定するというものです。2つ目は「サプライズ仮説」で、脳が予測と現実のずれ、つまり予測誤差そのものを痛みとして知覚するというものです。本研究では、どちらの仕組みが痛みの知覚を決定しているのかを調べました。仮想現実(VR)の環境を用いて、視覚的な脅威や熱刺激を使った実験を行った結果、脳は予測のずれを痛みとして強く知覚していることが分かり、「サプライズ仮説」がより適切に痛みの知覚メカニズムを説明できることが明らかになりました。また、予想外の出来事が発生すると、痛みが増幅されることが確認されました。

 慢性痛を抱える人は、漠然とした痛みへの恐怖や不安を常に感じており、そういった不確実な予想と現実のずれが痛みの強さをさらに増大させている可能性があります。本研究成果は、痛みを軽減するためには、痛みの予測と現実のずれ、すなわち「驚き」を減らすことが重要であることを示唆しています。痛みの感じ方をより深く理解することは、慢性痛や外傷からの回復を助ける新たな治療法の開発につながると期待されます。

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プレスリリース

研究代表者

狗万app足彩,狗万滚球システム情報系
井澤 淳 准教授

掲載論文

【題名】
Bayesian surprise intensifies pain in a novel visual-noxious association
(視覚―侵害刺激の特異な連合においてベイズサプライズは痛みを増強させる)
【掲載誌】
Cognition
【DOI】
10.1016/j.cognition.2025.106064

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