生物?環境

ハチは訪れる花の選択を花色と距離で能動的に調整していた ?ダーウィン以来の定説を超える「定花性」の包括的理解?

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 さまざまな花が咲くお花畑でも昆虫が1種類の花を連続して訪れる定花性という習性は、ダーウィン以来、異なる花を思い出す手間を避ける受動的な行動とされてきました。しかし実際には、思い出す手間と移動の手間を調整して最適解を選ぶ能動的戦略の結果であることを、ハチの実験で実証しました。

 マルハナバチなどの訪花昆虫は、さまざまな花が咲くお花畑でも、しばしば1種類の花だけを連続して訪れる習性を示します。これは「定花性」と呼ばれています。ダーウィンは定花性を、異なる花の特徴を思い出す手間を避ける受動的な反応だと考えました。しかし本研究では、この定説が「記憶の制約」という視点に偏った不完全な見方であり、実際の定花性は、記憶の呼び出し時間と移動時間のバランスでダイナミックに調整された最適戦略の結果であることを明らかにしました。

 本研究では、植物種の空間的な混在度に着目して、訪花昆虫の行動予測を立てました。異なる植物種が混じる環境では、1種類の花に固執すると近くの他種を飛び越えるための移動時間が増えてしまいます。このため、思い出す手間を多少かけても、定花性は適当なレベルに抑えるのが最適だと考えられます。花の色や形の種間差がそれほど大きくないときは、思い出す手間が少なくなるため、定花性はさらに低く抑えるのが最適です。一方、植物が種ごとに集まって分布する環境では、1種類の花に固執した方が思い出す手間だけでなく移動の手間も減らせます。このため、高い定花性が最適になります。

 これらの予測を確かめるため、2種類の人工花を用意し、その空間的な混じり具合と花色の違いから、クロマルハナバチの定花性がどのように変化するかを調べました。すると予測通り、2種が混じり合い、花色が似ているほど、ハチの定花性は低くなりました。一方、同種が集まる環境では、花色によらず、定花性は高く保たれました。以上の発見は、訪花昆虫の定花性に関する150年来の定説を超え、野外環境における昆虫の定花性についての包括的な理解をもたらす重要な知見です。

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プレスリリース

研究代表者

狗万app足彩,狗万滚球生命環境系
大橋 一晴 講師
高木 健太郎 生物学学位プログラム 博士後期課程2年次

掲載論文

【題名】
Realized flower constancy in bumble bees: Optimal foraging strategy balancing cognitive and travel costs and its possible consequences for floral diversity.
(実現定花性:認知コストと飛行コストをバランスする送粉者の最適採餌戦略と花の多様性に及ぼすその潜在的な影響)
【掲載誌】
Functional Ecology
【DOI】
10.1111/1365-2435.70008

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