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マウス卵母細胞の形成と再覚醒には「エキソシスト複合体」が重要

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(Image by Christoph Burgstedt/Shutterstock)
 卵母細胞の形成?休眠?再覚醒?成熟などにおいて、卵母細胞と顆粒膜細胞間の情報伝達が不可欠です。その際に、「エキソシスト複合体」というタンパク質複合体が重要な役割を果たしており、その欠損によって雌性不妊が生じることを、マウスをモデルにした研究で明らかにしました。

 多くの哺乳類では、限られた数の卵母細胞が次世代を生み出す役割を担っています。卵母細胞は、卵母細胞とその周りを囲む顆粒膜細胞からなる卵胞という構造の中で成長します。卵母細胞の形成、休眠、再覚醒、成熟において、卵母細胞と顆粒膜細胞間の情報伝達(クロストーク)が不可欠です。このクロストークにおいて重要な役割を果たすのが、卵母細胞で発現しているc-KITとGDF9というタンパク質です。これらのタンパク質が卵母細胞内でどのように輸送されているのかは不明でした。

 本研究では、エキソシスト複合体と呼ばれるタンパク質複合体が、c-KITとGDF9の卵母細胞内での適切な輸送に重要な役割を果たしていることを明らかにしました。

 エキソシスト複合体の構成要素の一つであるEXOC1タンパク質を卵母細胞で特異的に欠損させたマウスを用いて実験を行ったところ、卵母細胞の再覚醒と卵胞の成長過程における卵母細胞の成長が阻害され、顆粒膜細胞の増殖も抑制されることが分かりました。さらに詳しく調べた結果、EXOC1を欠損させた卵母細胞では、本来細胞膜上や細胞外に存在するはずのc-KITとGDF9が、細胞質内に異常に蓄積していました。同様の現象は、エキソシスト複合体を構成する他のEXOC3タンパク質やEXOC7タンパク質を欠損させた場合にも観察されました。

 以上のことから、エキソシスト複合体がc-KITとGDF9の卵母細胞内での適切な輸送に必須であり、この複合体の機能不全がメスの不妊を引き起こすことが明確に示されました。

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プレスリリース

研究代表者

狗万app足彩,狗万滚球医学医療系
水野 聖哉 教授

掲載論文

【題名】
Exocyst complex component 1 (Exoc1) loss in dormant oocyte disrupts c-KIT and growth differentiation factor (GDF9) subcellular localization and causes female infertility in mice
(休眠卵母細胞におけるExoc1遺伝子の欠損は、c-KITおよびGDF9の細胞内局在を崩壊させ、マウスの雌性不妊症を引き起こす。)
【掲載誌】
Cell Death Discovery
【DOI】
10.1038/s41420-025-02291-5

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