社会?文化
環境変動と移動が協力の進化を促すメカニズムをシミュレーションで検証
二次元空間上のマルチエージェント?シミュレーションにより、環境変動と個体の移動が人類の協力行動の進化を促進しうることを示しました。また、その背景には、環境変動と移動の相互作用が非協力的な集団の持続を妨げ、協力的な集団の形成を促すメカニズムが働いていることが分かりました。
協力行動は人間社会の基本的な特徴の一つです。本研究では、中期旧石器時代のアフリカにおける環境変動の激化が、人類の行動進化に影響を与えたという仮説に基づき、環境変動と個体の移動が協力行動の進化に及ぼす影響を検証しました。
本研究で用いたマルチエージェント?シミュレーション(人間など複数のエージェントの自律的な行動とエージェント間の相互作用をモデル化するシミュレーション技術)のモデルでは、環境変動を「リソースの豊富な地点が二次元空間上をランダムに移動する状況」として表現し、個体の移動を「リソースを求めて移動するエージェントの行動」として表現しています。エージェント同士はリソースを巡って協力的あるいは競争的に相互作用し、より豊かなリソースを持つ近隣エージェントの行動様式を模倣します。
シミュレーションの結果、環境変動性と個体の移動性が十分に高い場合に、協力行動が進化しやすくなることが示されました。また、その背景には、環境変動と移動の相互作用によって非協力的な集団の持続が妨げられ、協力的な集団の形成が促されるメカニズムが働いていることが分かりました。
本研究は、環境変動と個体の移動を別々に扱ってきたこれまでの研究とは異なり、両者の相互作用が協力の進化に果たす役割を体系的に分析したものであり、人類の協力行動、ひいては高度な社会性の進化に対して、環境変動と個体の移動が与えた影響に関する新たな視点を提供しています。
PDF資料
プレスリリース研究代表者
稲葉 理晃 社会工学学位プログラム(博士後期課程)3年次狗万app足彩,狗万滚球システム情報系
秋山 英三 教授
掲載論文
- 【題名】
-
Evolution of cooperation among migrating resource-oriented agents under environmental variability
(環境変動下におけるリソース指向移動エージェントの協力の進化) - 【掲載誌】
- Chaos, Solitons & Fractals
- 【DOI】
- 10.1016/j.chaos.2025.117592
関連リンク
社会工学学位プログラムシステム情報系