狗万app足彩,狗万滚球

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学長所信表明

人が人としてあるために

 学問分野を超えて、我々に共通する悩みがあります。ここ何年か、私の思いの中心にあったのは、「人とは?」という課題でした。それは、AI(artificial intelligence)のあまりにも急激な発展を背景とした課題です。米国のOpenAI社が開発した生成AIサービスChatGPT(GPT-3.5)がリリースされたのは2022年11月のことでした。世代やバージョンと呼ばれる各種のデバイスの改良は、これまでは早くても2~3年単位であったと認識していますが、AIのそれは6か月単位あるいはそれ以上の速さです。クラシックな生成AIのみならずAIエージェント、フィジカルAI技術の改良も同様のスピードで進んでいます。

 生成AIサービスは、大量のデータからあらかじめ学習した大規模言語モデル(LLM)により、ユーザーの入力した文章(prompt)に対し、単語や文脈の関係性を分析して処理し、テキストだけでなく、画像や動画、音楽などのオリジナルコンテンツを自動的に生成します。すでに、AIの利用は急速に広まり、今やビジネス?社会の必需品となっています。現在のAIでさえ、事務仕事のみならずスピーチの原稿や実験の工程表なども、ユーザーが適切に命ずれば、相当に完成度の高いものを生み出してきます。フィジカルAIが進めば、介護の支援はもとより各種の家事、ペットの世話なども任せることができることは確実です。では、人は何を行えばよいのでしょうか。社会的動物である我々、人は、本能的な喜びを含めて単に自分自身の喜びを満たすことだけではなく、仕事やそのほかの活動を通じて社会に貢献する喜びを求めるものです。さらなる進歩が予測されるAIの未来を思うとき、「我々は何を為せば良いのか」「我々が為すべきことは何か」、そして「人とは?」という問いに行き着くこととなります。

 こうした背景の中で大学の教育?研究の在り方、大学そのものの在り方などについて深く考えていかなければなりません。感性を磨き、他者との協働を理解し、想像力を鍛え、創造力を身につけられる教育?研究のシステムと環境をしっかりと整えていかなければなりません。

学長 永田恭介
学長 永田恭介

「真の総合大学」にふさわしい教育

 国立大学法人評価(中期目標期間評価)は、文部科学大臣が定める中期目標に沿って国立大学法人が策定した中期計画に基づいて、当該期間における業務実績を評価し、次期の中期目標?中期計画の内容や運営費交付金の算定などに活用されます。昨年度は、第4期中期目標?中期計画期間の4年目終了時評価の年でした。中期目標?中期計画のKPI(Key Performance Indicator)の達成度により第5期中期目標期間の本学の運営費交付金の算定額の増減が決まります。

 今年度中に、狗万app足彩,狗万滚球10(2028)年度から始まる第5期中期目標?中期計画を立案し、来年度早々の文部科学省への提出に備えなければなりません。開学50周年を超えNEXT50に向け、建学の理念に示された本学の個性をよく理解し、指定国立大学法人の指定に関する構想調書で目標として示した、多様な分野を揃え協業し、既存の学問分野のみでは解決できない課題に挑戦する学問分野を創成する真の総合大学を実現する施策を全学的に議論していきます。学士課程では学類システムを真の学位プログラムに再構築し、大学院と一体となったカリキュラムを編成して、真の総合大学にふさわしい教育システムを考案していこうと考えています。

連携?協働大学院の拡充による博士人材の増大

 2040年度の18歳人口は現在の7割程度に落ち込みます。激減が始まるのは2035年度からです。多数の私立大学が学士課程の再編?統合、縮小、撤退を余儀なくされます。国立大学も、学士課程について従前の収容定員を保ち続けることは困難です。狗万app足彩,狗万滚球7(2025)年2月の中央教育審議会の「我が国の『知の総和』向上の未来像~高等教育システムの再構築~(答申)」(「知の総和」向上答申)は、地方国立大学については地域?産業のニーズに応じた学部?学科への再編を、研究型大学については収容定員?資源を学部から大学院へのシフトを、示唆しています。世界のトップ大学と伍して卓越した教育研究、社会実装の推進に取り組む研究型大学である本学は、一部の収容定員を大学院へ移すことを考えなければなりません。

 「知の総和」向上答申は、人口減少社会において日本の「知の総和」を増大させるために、人々がより高度な教育を受ける必要性、すなわち大学院修了の標準化を求めています。高卒が普通であった時代から大学卒が当然の現況を経て大学院修了者が社会を組成する未来を構想しています。「はばたけ!筑大生」の申請書などを比較すれば一見してわかるように、学士、修士、博士の課程の学生の間には差があります。PhD(Doctor of Philosophy)取得者、つまり「博士」とは何か。私は本質を見抜く力を身につけた者と考えていますが、授与される学位名に関しては本学でも大きな議論が必要だと考えています。

 連携大学院?協働大学院の拡充を進めていきます。開始3年間で文部省から客員教官定員141名?学生定員47名を得た第一号連携大学院方式は、研究機関の研究者を大学の教授?准教授として迎え、その機関の研究環境を活用しながら研究指導等を行う大学院の教育方式です。現在、特定国立研究開発法人産業技術総合研究所(AIST)や国立研究開発法人物質?材料研究機構(NIMS)をはじめとして筑波研究学園都市に存在する31の国や民間の研究機関の協力を得ています。平成16(2004)年度から始まった第二号連携大学院方式では、研究機関の研究者を大学の教員(連携教員)として迎え、その連携教員のみで構成する教育課程(独立連係専攻)を編成し、本学の専任教員は協力教員として修学指導や学生生活支援を行っています。本学独自の協働大学院方式は、国立?独立行政法人(国立研究開発法人を含む)?民間企業等の研究機関と本学が協力してコンソーシアムを形成し、それを母体として学位プログラムを運営し、産学官協働で人材を育成しています。

 連携大学院?協働大学院には、現在、508名の大学院生と229名の学外研究者が参画しています。本学は、これらの量的な拡大と質の向上を目指し、筑波研究学園都市全体で先進分野の人材育成機能を飛躍的に向上させ、大学院生と学外研究者をそれぞれ2040年までに約3倍に増加させ、国の科学技術開発を先導する人材の育成も図っていきます。

社会?企業との連携による教育の新基軸

 文部科学省は、狗万app足彩,狗万滚球6(2024)年3月に「博士人材活躍プラン~博士をとろう(取ろう/採ろう)~」を発表し、2040年の人口100万人当たりの博士号取得者数を、2020年度比の約3倍に引き上げることを目標として掲げています。博士号取得者が増えても、アカデミアのポストはそれほど増えません。博士課程はアカデミアへ進むためのものという固定観念を改め、大学院修了後のキャリアパスの多様化を進めていかなければなりません。国公私立大学と日本経済団体連合会(経団連)の代表者による「博士人材に関する産学協議会合」は、狗万app足彩,狗万滚球8(2026)年2月10日、「博士人材が活躍する社会の実現に向けて―目指すべき姿と具体的な取り組み―」を公表しました。そこでは、日本の国際競争力の源泉は科学技術であるという認識の下、価値創造のための能力として、「博士課程で培われる、深い専門知識とそれを俯瞰?統合する力、自律的な探究力、仮説検証に基づく創造力、未知の課題に挑戦し解決へと導く力」が重要だと述べられています。経団連会員企業は、博士課程に、高度な専門性に加え、産業界等でトランスファラブルスキル(汎用的能力)を発揮できる人材の育成を求めているだけではなく、給与?待遇を含めた博士号取得者の活かし方の改革を始めています。

 文部科学省科学技術?学術政策局人材政策課「博士後期課程修了者の進路について」(狗万app足彩,狗万滚球5年1月)によれば、狗万app足彩,狗万滚球3年度の博士号取得者のうち、大学教員となった者は15.8%であるのに対して、民間企業(研究開発職を含む)に進んだ者はすでに33.9%となっています。本学も博士後期課程学生数を3倍(6,000人程度)に増やし、文系は修士修了、理系は博士修了を標準化することを考えています。そのためには、博士に必要な資質を明確化し、企業等との連携を進めていく必要があります。

 前者について、昨年11月20日に教育研究評議会で「狗万app足彩,狗万滚球が授与する学位の意味について」を定めました。その中で博士の学位は、「未解決の学術的課題や社会課題に対して、『自ら問いを設定し、課題の克服に向けた学際的研究行程を描き、新たな真理の発見や価値の創造をもたらす自立した研究力』と『対立する概念や価値観を結びつけ、より高い次元に止揚させ統合させる創発力』からなる知の創成力に、研究成果を基に国際社会の発展に寄与する知の活用力が加わった創造的な知性」を備えた者に与える必要があるとしています。

 後者について、焦点の一つは産学共同教育の推進です。単位化され有給化されたジョブ型インターンシップ、インターンシップを通じた企業との共同研究の活性化、大学と企業?自治体が共同で作成した学習計画を数ヵ月にわたって実施するコーオプ教育(Cooperative Education)などを進めていく必要があります。本学で行っている「大学×国研×企業連携によるトップランナー育成プログラム TRiSTAR(Top Runner in Strategy of Transborder Advanced Researches)」は、前出の「博士人材に関する産学協議会合」でも特筆すべき取組として紹介されています。TRiSTARは、大学と国のミッションを持った研究所及びビジネス界が協力して、専門力の深化と俯瞰力?マネジメント力の涵養を目指した取組です。文部科学省の狗万app足彩,狗万滚球7年度「未来を先導する世界トップレベル大学院教育拠点創出事業」(特色型)に採択された電気通信大学の提案「日本版Industrial PhDによる未来共創リーダー育成拠点」は参考に値します。産業界の加わる教育プログラムを策定するに当たっては、教育の基本システムについては大学に経験がありますが、カリキュラム?シラバスの作成には「世間知らず」(「博士人材に関する産学協議会合」が開催したシンポジウム(2026年3月7日)において、博士号を取得し企業に勤める若手が発した大学評)の大学は十分に産業界の意見を取り入れることが大切です。

大学院の1研究科化

 学位プログラム編成の自由度を格段に向上させ、組織、分野、制度の壁を越えた大学院教育を実現し、次世代の学術を担う大学院生の学びの障壁を減らすために、将来は大学院を一つの研究科(学術院)に統合する計画が立てられています。そこでは、完全ダブルメンター制(共同研究する異分野のメンター教員による複数指導制)とリバースメンター制(両分野を学んだ学生が各メンター教員に対して異分野教育の研究内容を逆の立場で教示する仕組み)を取り入れ、複数の分野を融合させる革新的なバイディシプリン教育が期待されています。

 その先駆けとなる学際創成学術院(G-SIGMA)が研究科等連係課程実施基本組織として来年度開設される予定です。新学術院には、これまでグローバル教育院に置かれていたライフイノベーション学位プログラムとヒューマニクス学位プログラムに加え、創成法学学位プログラム、ソーシャルエコロジー学位プログラム、次世代エネルギー共創学位プログラムを置き、学際的な教育研究体制とマルチメンター制に基づいて、今後の中長期的な社会変革の中核を担うと考えられる分野を牽引し、最新の科学技術を法制度や社会実装へと繋ぐ高度専門人材を育成します。

 大学院の拡充を図る際には、大学院学生の多様なキャリアパスの構築とともに、学生への支援も必要です。本学は、JST(科学技術振興機構)のSPRING(次世代研究者挑戦的研究プログラム)やBOOST(国家戦略分野の若手研究者及び博士後期課程学生の育成事業?次世代AI人材育成プログラム)に採択され、優秀な博士後期課程相当の学生に給付型の支援経費(生活費相当額及び研究費)が支給されています。SPRINGについては、狗万app足彩,狗万滚球5年度は351名の学生が支援を受け(割合としては全国3位、支援額としては2位)、狗万app足彩,狗万滚球6年度からは565名が支援を受けています。また若手研究者のためのwebサロンシステム「PhD×FUTURE.」を構築して、共同研究やインターンシップ?就職などのマッチングの機会を提供しています。日本学術振興会特別研究員、国費留学生、授業料免除、TA(Teaching Assistant)/TF(Teaching Fellow)、RA(Research Assistant)、大学フェローシップ創設事業などを合わせれば、相当数の大学院生が何らかの支援を受けているのですが、各種の経済支援制度を一体的?戦略的に運用する仕組みを構築することなどが必要であると考えています。

 大学院生の研究力の分析?可視化や産学官連携の推進のために学術院総合戦略本部を設置しています。しかし、人間総合科学学術院以外の学術院の活動は停滞していますので、大学院生のために活動の活性化を切望いたします。

留学生受入れの拡大と英語科目の拡充

 学類?専門学群の学生定員数は、教育組織に必要な教員数と連動します。収容定員を大幅に削ることになれば教員数も減らさなければならなくなります。可能な限り、現在の定員に近い数の学生を確保するためには、減少する18歳人口に代わる多様な学生、とりわけ外国人留学生の受入れが不可欠です。

 外国人留学生の受入れは、減りゆく日本人学生の穴埋めとしてだけ考えているわけではありません。日本に異なる価値観をもたらし、日本の良さを理解し、世界で活躍することを目指す外国人学生と、世界から学び、世界に発信し、世界と渡り合い、日本を再び世界を先導する国にすることを目指す日本人学生とが、対等な条件で切磋琢磨し、相互に理解と信頼を深め合う国際的な多文化共修環境を創り出し、世界をリードする有為な若者を育成したいというのが本学の考えです。

 本学は、昨年11月、文部科学省が創設した外国人留学生受入れのための「国際競争力けん引学部等」認定制度に申請し、本年2月17日、「大学?高専機能強化支援事業」により収容定員が増員されているためにこの制度の対象外となる理工学群?情報学群を除き、7学群が認定を受けました。2041年までに本学の学士課程の外国人留学生の割合を20%に高めていくことになりますが、それまでの間、収容定員の上限が5%引き上げられる特例を受けることができます。この制度を利用できる間に、世界各地から多数の優秀な外国人留学生を確保できるような入試やカリキュラムに改革していかなければなりません。また外国人学生の出身国?地域の多様化も進めていく必要があります。本学は、グローバル?サウスの国々、とりわけインドやアフリカを今後の国際活動の展開先に据えていますので、それらの国々の出身学生を増やす方策も必要です。実際、文部科学省の「大学の世界展開力強化事業~グローバル?サウスの国々との大学間交流形成支援~」には、本学からの提案はタイプI(インド)、タイプII(アフリカ)のそれぞれで同時に採択されています。また、科学技術振興機構事業であるLOTUSプログラム(インド若手科学頭脳循環プログラム)では、昨年度はインドから大学院生を含む若手研究者を多数受け入れることができました(国内大学中3位)。今年度も募集がありますので、奮って応募してください。

 本学は、我が国の他の大学に先駆けて推薦入試を導入し、AO入試も国立大学で最初に導入した三つの大学のうちの一つです。他の大学のモデルになる新しい入試制度を考案して実現することが建学の理念に沿った本学の在り方です。昨年度、狗万app足彩,狗万滚球10年度入試から多くの学類で面接?口述試験を導入することを決めていただきましたが、議論の過程で上述の本学の使命が再認識されたものと思います。「狗万app足彩,狗万滚球は、自立して世界的に活躍できる人材を育成するため、本学の教育を受けるのに必要な基礎学力を有し、探究心旺盛で積極性?主体性に富む人材を受け入れます」という入学者受入れ方針(アドミッション?ポリシー)を掲げています。「基礎学力」のみならず、「探究心旺盛で積極性?主体性に富む人材」をどうやって測り、受け入れるのか、その観点に基づいた議論が重要です。

 入試改革は道半ばだと受け止めています。本学の教育研究に対する姿勢を理解し、本学が授けるディプロマを取得するためのカリキュラムに適合している者を選抜する仕組みの設計が必要です。選抜(今後は、「選抜」はできなくなり、大学と受験者の相互の「選択」になっていきます)は、日本人であるか外国人であるかに関係なく、同等な選抜/選択方式により、本学で学ぶことに対する熱意、問題発見能力や批判力、分析能力、論理的記述力、そして人間性を、時間をかけて見極めるものにしてほしいと考えています。

 外国人留学生が、英語の授業を受けるだけで学位を得られるようにしていくことも重要です。英語プログラムだけでなく、一般のプログラムにも英語の授業を増やして、外国人留学生が日本人学生と一体感を持って学べる教育環境を早く整備してほしいと考えています。

 他方、外国人留学生が、卒業後、日本の企業で働くためには、日本語の能力が必要になるのが現実です。そのために日本内外のアカデミアや産業界で活躍できるよう、外国人留学生に対する日本語教育の充実も必要です。グローバルコミュニケーション教育センター(CEGLOC)には日本語教育の充実に努めてもらっていますが、日本語を母語としない者に対する初歩水準の日本語学修を必修にしたいと考えています。

 日本人学生の英語コミュニケーション能力、外国人学生の日本語によるコミュニケーション能力を向上させて、「留学生」という言葉が意識されることがないぐらい、外国人学生と日本人学生とが一緒に学び、交流する国際性の日常化を実現させたいと考えます。

チュートリアル教育と1年次全員入居システム

 本学は、指定国立大学法人構想で、つくば型チュートリアル教育をおよそ10年かけて全学に広げていくこととしています。学生自身の問題意識を学問的な課題に引き上げるよう指導するチュートリアル教育は、学修者本位の教育と学修成果の可視化にマッチした取組です。学士課程において真に自身の将来像を見つけるために、①入学から卒業まで一貫して行われ、②学生が、対話と議論をとおした学びから専門分野とそれに連なる広範な分野への造詣を深め、③批判的?創造的な視点をもって社会と向き合い、④社会課題への解決策を未来に向けてデザインできる力を養うものです。一昨年度から、計画を前倒しして、総合科目(学士基盤科目)「学問探究チュートリアル」を開講しており、参加した学生と教員からは好評を得ています。なお、授業科目の時間割について、他学類の選択科目を受講しやすくする工夫を要望する声が多くの学生から上がっています。各教育組織は、ぜひ考慮していただくようお願いいたします。

 同じキャンパスで切磋琢磨することは学生にとって重要な意味を持っています。学群の新入生は、英米の有名大学の全寮制のように、原則として全員、一度は豊かな自然に囲まれた学住近接型学生宿舎に入り、世界の多様な文化と価値観に溢れるコミュニティの中で同じ釜の飯を食い、狗万app足彩,狗万滚球の一員としてのアイデンティティを育むようにしたいと考えています(1年次全員入居システムまたは全寮制)。第4期中期計画では、「学生宿舎への新入生の入居率を狗万app足彩,狗万滚球9年度(2027年度)末までに80%にする(体験入居、ショートステイを含む)」ことを目標としています。

 今年3月、宿舎エリアに大学債「狗万app足彩,狗万滚球社会的価値創造債」を活用した未来社会デザイン棟が竣工しました。5月30日に開所式を大々的に行う予定です。この施設は、社会活動との交流の中で主体性?社会性を育成する場、教育研究に加えて社会事業を体験した学生の文化発信の場、地域社会との交流の場、教職員と企業の研究者がアンダーワンルーフで共同研究を行って課題を解決する教育研究に挑むマインドを醸成する場となります。

2+(4 or 3)+3制と学群?学類再編

 4年前から、学士課程4年+修士課程2年+博士課程3年という教育課程を、学制を維持しつつ、2年(米国型リベラルアーツ)+[4 or 3]年(メジャー)+3年(アドバンストリサーチ)制(2+[4 or 3]+3制)のカリキュラムに変革し、学士課程から博士課程まで体系的な教育体制にすることを提案し、それに向けた検討が続けられています。

 米国型リベラルアーツは、日本の大学で行われた一般教養(general education)とは異なります。専門分野にとらわれず、それぞれの興味?関心に基づいて様々な分野の学問を選択して学ぶことによって、幅広い知識や技能を身につけ、人間性や創造性、実行力などを育成するものです。学士課程1年生に対してであれ、専門の基礎を教えるというのではなく、専門の真髄を教えることが肝要です。科学技術の進展や社会問題の複雑化により、特定の問題に取り組むためには、一つの専門分野だけでは対応できなくなっています。高度な専門教育を受ける前に、その専門分野を学ぶための基盤として広く深い思考が必要です。最先端の研究に取り組む人材を育成している米国のアイビーリーグの大学でもリベラルアーツを重視しているのはそのためです。

 総合学域群は、学生が幅広い視野から文理の区別にとらわれない学問的発想を磨き、自分の関心に適した専門分野を選択するレイトスペシャライゼーションを取り入れています。今後、総合学域群の拡充を含め、学士課程の最初の2年をどのように教育していくか、2+(4 or 3)+3制の検討の中で議論してほしいと思います。

 指定国立大学法人構想では、第5期中期目標?中期計画期間の狗万app足彩,狗万滚球13(2031)年度に学群?学類再編を行うこととしています。教学デザイン室から、学際的な教育を可能にする大括りの教育組織構想を基盤とした教育改革に関する提言書がもうすぐ発出されると聞いています。総合智教育、専門導入科目、多文化共修科目などを含む共通科目の在り方も十分に検討すべきです。

本学の海外への教育展開

 狗万app足彩,狗万滚球6(2024)年9月、海外で初めて日本の学位を授与する大学として狗万app足彩,狗万滚球マレーシア校が開校し、地球規模課題解決に資する人材を育成するデザインスクールである学際サイエンス?デザイン専門学群が設置されました。新学群は、データサイエンスを基軸とし、自然科学、人文社会科学の考え方、技術を、各分野を深化させるだけではなく、環境に関する課題などを代表とする広い社会課題に適用し、デザイン思考を踏まえつつ創造的に地球規模課題解決に貢献する人材を育成することを目的としています。マレーシア校は我々にとっては、一つの学群です。筑波キャンパスの各学群は、マレーシア校と協働できるコンテンツを考えて実施していただきたいと考えています。本年1月には、マレーシア校を支援してくれている、本学より世界ランキングが上位のマラヤ大学が、つくばで学生の国際会議Global Student Leadership Summit 2026を開催しました。会議自体は優れて興味深いものであり、加えてマレーシア校を通じての企画であったので、もっと参加学生がいても良いイベントでした。マレーシア校には、多くの国内外の大学から協力の申し出などがありますので、基盤が確立できれば他の大学と互恵的な連携を進め、我が国の国際化の推進にも寄与したいと考えていますし、マレーシア国内の企業等とも十分な協働を果たしたいと思います。一方、マレーシアの国内外から多数の志願者を集める努力も必要です。

 本学は、マレーシア日本国際工科院(大学院)(MJIIT)、日越大学、エジプト日本科学技術大学(E-JUST)、オグズハン工科大学(トルクメニスタン)の創設と運営に関わり、海外への日本型及び本学型の教育輸出に努めています。昨年12月には、「中央アジア+日本」対話?首脳会合で訪日されたウズベキスタンのミルジョーエフ大統領、松本洋平文部科学大臣が出席した高等教育に関する会合において、ウズベキスタンから提案があった日本型の新たな教育研究組織の設置に関する協力覚書に署名しました。本学は、世話人大学の一つとして、日本の協力大学コンソーシアムを形成し、持続可能な日本型教育研究を行う現地の大学作りに参画する予定です。最初の分野は、デジタルに関する科学と工学及びビジネス科学となる予想です。

筑波研究学園都市の研究力の結集

筑波研究教育機構の設立

 筑波研究学園都市には固有のミッションを有する官民の研究機関が集積しており、その研究力を結集すれば、世界のトップ研究大学を凌駕します。本学は、これらの研究機関が参画する筑波研究教育機構(Tsukuba Institutes for Research, Education, Culture and Sports; T-REX)の設立を主導し、ポストSociety 5.0を見据え、産学官金が協業して科学技術成果を生み出し、スーパーシティ型国家戦略特区に指定されたつくば市をフィールドとして社会実装実験を推進し、その価値を文化的?知的変容に繋げ、国内ならびに世界に波及させて固定化した社会の変革を先導したいと考えています。このアイデアを支えるのは、本学が先導してきた教?教分離、すなわち教員組織(研究組織)と教育組織の分離の考え方です。この考え方によって、各研究機関を教員組織(研究組織)と捉えることができるからです。

 これは、国際卓越研究大学への申請で中核をなす構想であり、次期中期目標?中期計画の中核でもあります。T-REXの基盤となるのは、大学院教育において研究機関と協働で構築してきた連携大学院や協働大学院です。研究機関にとっても次世代研究者の育成は重要な課題となっています。この教育における協働を研究?産学連携?研究環境整備等にも拡大します。共同研究では、物理的な空間を共有しアイデア段階から協働することで革新的な研究成果が生まれることが知られています[Nature 623: 987-991 (2023)]。筑波研究学園都市の研究機関全体が共創体として社会とともに未来をデザインし、日本の文化の発展と産業の革新を先導していきたいと考えています。

 先月3月23日、T-REXの形成に向けた覚書を交わしました。この4月には連携大学院?協働大学院を一体的に支援する事務局(筑波共創推進局:新たな大学執行役員を配置)として支援室相当の部署を発足させました。これらの措置と多くの業務を委託する先であるTGI(Tsukuba Global Innovation Promotion Agency:つくばグローバル?イノベーション機構)の参画により、連携機関とそこを学びの場とする学生の利便性が向上します。今後のポイントの一つは、共創体が共同の視点から協働して外部から研究資金を獲得できるように支援することです。そのために、T-REXを一般社団法人として設立する計画を立てています。将来、フランスの試行的公施設法人(?tablissement Public Expérimental; EPE)のような組織形態が法的に整備されれば、T-REXをその形態に移行させたいと考えています。

AIXセンターとABIセンター

 2016年度の学長所信(「第3期中期目標期間を迎えて」)の中で、「自然科学であれ、人文社会学であれ、それぞれの研究課題の根源は、Origin of Universe、Origin of Life、Cognitionのいずれかではないかと個人的には考えています。これらは、もちろん哲学の根本的な問題です。......個々の課題を考えてみると、学問領域の間の壁は極めて低く、互いに真摯に議論を交わすことができるものと考えています」と述べました。本所信の冒頭で、AIの進歩と危惧について述べました。その枢要は、recognitionとcognitionについて考究することではないかと考えています。

 AIはあらゆる学問領域と結びつけることができますので、人文社会科学から体育?スポーツ、芸術に至るまでAI for Scienceに取り組み、その成果はAIX(AI transformation)、すなわちAIによる社会変革に繋がっていくはずです。一方、AIをますます進化させるためには、Science for AIの研究を進めていかなければなりません。それは、人口頭脳の開発研究、今日ではABI(Artificial Brain & Intelligence: 人工脳知能)と呼ばれるようになっている研究に直結しています。感覚器から得られた外部情報を処理し、身体を動かす研究の鍵となるのはセンシングとブレイン?マシーン?インターフェースであると考えられています。センシングは、人間の五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)の代わりにセンサーによって物理的な情報を計測してデータ化し、制御や予測に用いるようにするための技術です。ブレイン?マシーン?インターフェースは、脳と機械を繋いで思念に基づく脳波や神経信号を伝達する技術です。脳?神経?筋系疾患で損傷した神経?筋機能の回復を実現している山海嘉之教授による世界初の装着型サイボーグHAL(Hybrid Assistive Limb)はその基盤になるでしょう。

 外からの情報?刺激などに呼応して、これまでに蓄積した知識?経験に照らし合わせて、判断することはrecognition(認識)という言葉で表される過程です。一方、cognition(認知)は、自発的な動機に従い、未知のことに関して判断して、理解する過程です。後者の実体を明らかにするためには、人間の身体性、感性、創造性を対象とする学術分野(芸術系、体育?スポーツ系、人間系、医学系、人文社会系等)との協業が必須です。認知メカニズムを解明し、それを数理?工学によって再構築することにより、仮説と論理的証明が往還する新たな学理創成が可能となります。他の大学にはない分野も揃えた本学こそ、認知の研究を推進するにふさわしいのではないでしょうか。

 AIを中心としたデジタル分野の著しい進展に鑑み、平成29(2017)年に設置した人工知能科学センター(C-AIR)をAIXセンターとABIセンターに分化?発展させたいと思います。AIXは、既存のAI研究成果を基盤として、あらゆる学問分野を横断?再構成するための共通基盤を高度化するものです。ABIは、AIの新たなフレームワークを開発するとともに、recognition/cognitionを学理として構築するものです。

 本学は、データサイエンス、AI、サイバーセキュリティなどのデジタル分野における研究と教育における日米の大学や研究機関、民間企業の連携を組織的に支援する体制構築を行う日米デジタルイノベーションハブコンソーシアムの世話人校として国際的な産学官連携を進めてきました。昨年5月には、日欧デジタルイノベーションハブの形成に向けて、日欧デジタル基盤ネットワークの第1回シンポジウムを開催しました。日米、日欧のデジタルハブを通じて共同研究を進めていくことに強い期待を持っています。特に後者の日欧両者の共通の思いは、Horizon Europeの枠組みに協働で入り込むことです。我が国もこの枠組みに準参加するための資金を予算化しましたので、日本の研究機関や企業が加盟国の機関と同等の条件で共同プロジェクトを遂行したり、資金を調達したりすることなどが可能となりました。

総合情報アナリティクス機構

 本学のcuriosity-drivenの研究は、「宇宙の始まりから物質の創生」「地球の進化と生命の起源」「人類(知性)の誕生と文明の創造」という138億年にわたる宇宙の歴史の中に位置づけられ、その進化と相転移の原理の探求に帰着すると考えています。これに加えて、本学が critical and emerging researchと位置づけているのは、水素、デジタル、宇宙、リスク、野生生物の各領域です。これらは、複雑で不確実性が高く、従来の分野別アプローチのみでは十分に扱うことが困難な対象です。第5期中期目標?中期計画期間では、これらの領域に関わる研究のクラスタをAIXが横断的に支援し、データ統合、シミュレーション、仮説生成、複雑系解析等を通じて探索型?創発型の研究が加速されるのではないでしょうか。

 社会課題の複雑化と急速な環境変化の中、学内外データと多様な知を結集し、エビデンスに基づく機動的な経営判断に資する情報分析を行う体制を強化するため、今年4月より総合情報アナリティクス機構を設置しました。この機構は、情報マネジメント担当副学長の下、IR(Institutional Research)、トランスIRはもとより、①社会変革に資する分野の探索?調査と新たな研究領域の開拓、②分野間協業の設計、③国内外の社会?経済動向の継続的な分析に基づく課題抽出と政策提言、④動向分析を踏まえた本学の資金調達戦略の策定支援を担い、定量?定性の両面から得た知見を大学の戦略立案?資源配分?対外説明に還元します。将来は大学発シンクタンクとして外部法人化したいと考えています。なお、本学のDXも、情報マネジメント担当副学長と情報マネジメント室のリーダーシップで強力に推進することとしています。

人事の重要性

 研究力強化のためには、採用人事が最も重要な段階の一つです。十分にオリジナリティ溢れる研究力があるか、今後の伸びしろがあるか、相当の時間をかけて選考し、実績が十分であるなら、若くても高い職位で採用すべきです。テニュアトラックではない助教採用人事を行えるようにしましたが、その前提として、これまで以上に冷徹に研究力の有無を審査し、対応することを約束いただいています。昔ながらの人事制度、すなわち講座当たり教授1-准教授1-助教2の枠組みは、この点で厳しい制度と言えます。若手?中堅が一度は他大学を経験するなどの頭脳循環の促進も必要です。昇任人事にも、長期展望に基づく計画と審査を求めます。

研究支援体制の強化

 研究力強化には、教員、職員に続く「第三の職」と呼んできた、研究を支援する専門職人材を充実させ、研究支援体制の強化も必要です。本学には、URA(University Research Administrator)、技術職員、ファンドレイザー、基金マネージャー、技術移転マネージャー、クリエイティブマネージャー、スポーツアドミニストレーター、アスレティックトレーナーなど、多数の多様な専門職人材がいます。これらの専門職人材を増やし、処遇を改善する方策を考えていかなければなりません。また少子化の進展に伴い、シニア教職員の活用にも改善が必要です。

 本学で働く人々の給与の将来像を描ききれていません。ビジネスの世界では場合によって新卒の給与額が国立大学の教授並み、優れたエンジニアや研究者であればその数倍給与が払われるようになってきています。この問題は優れた外国人研究者を雇用するためにも克服していかなければなりません。

 研究力強化のために、教育及び学内運営の効率化を進め、研究時間の確保も必要です。入試問題作成の退職教員への委託や入試監督業務の大学院生への委嘱を行えるようにしています。学内運営については、学内会議を削減し、部局マネジメントを部局長に完全に委任するなど、各部局における工夫に期待しています。

 健全な雰囲気作りも欠かせません。昨年度から、研究力強化とリスクフリーの環境を維持する観点から系内に適正な構成員数からなる域を公式なものとし、域長を置くことを義務づけました。ただし、研究の規模を拡大するためには、域の設置だけでは足りないかもしれません。そこで、研究クラスタ制(超講座制)、または、科目グループ制のいずれか、もしくはいずれをも採用してはどうかという提案が、若手を中心とした学長補佐室並びに研究戦略室から上がってきています。

 共同研究の大規模化、共著論文数の増大が見込める分野――例えば実験を必須とする研究分野――には、複数のPIsからなる大講座制的な「研究クラスタ」(超講座)が形成されてもよいのではないでしょうか。研究クラスタ内は、複数の教授?准教授のPIsが、研究の自立性を保ちつつ、相互に協力してクラスタを率いて研究を推進します。研究クラスタ内の助教やポスドク、大学院学生等を賄うため、PIsは相互に協力して外部資金を獲得します。助教は、PIになれる余地はありますが、原則として研究クラスタの教授?准教授が人選し、その代わりに教授?准教授が責任を持って一人前の研究者に育てます。ただし、助教が教授や准教授の下働きをするだけにならないよう、系や域によるマネジメント?ガバナンスが欠かせません。研究クラスタをつくるインセンティブを与えるための制度がこれを促進します。教員業績評価に際しては、個人の研究の評価ではなく、クラスタの研究の評価がなされます。

 あるいは、教育に関する教員グループをつくり、開講科目を精選し、科目を交代で担当するチーム?ティーチング等を行う科目グループ制を活用し、数年に一度、交代でサバティカルをとれる体制を構築することも以前から提案しています。教員の教育にかける時間を減らし、研究にかける時間を増やすことができますし、チーム?ティーチングにより、教員間の教育の内容や方法などに関する共通理解が促進され、そのことが研究についても議論することに繋がるはずです。いずれの場合も、グループの頭(かしら)の力が重要ですが、それぞれの組織や研究分野に合った方法で研究のグループ化、大規模化を積極的に考えていただきたく思います。

 各PI、少なくともクラスタを率いるPIは、それぞれの科学コミュニティの中でそれを牽引する覚悟を、適切なコミュニティがなければ創設する意欲を持ってほしいと思います。

高等研究院と基盤研究院

 世界最高水準の研究成果を持続的に生み出すとともに、新しい研究を創成する研究環境を構築し、それをもって世界における知のフロンティアの開拓と新たな価値創造に貢献する組織として設置した高等研究院には、トップダウンで戦略的な人事配置と予算?施設設備の配分を行っています。高等研究院に参画している国際統合睡眠医科学研究機構(IIIS)と、人工知能科学センター、ホウ化水素研究センター、微生物サステイナビリティ研究センターは、相互に連携することで研究力を高め、一定の権限を有する研究組織としてスピンアウトしていくことを期待しています。

 高等研究院には、社会と科学の研究ユニット及び自発研究ユニットを置いています。社会と科学の研究ユニットは、人文社会科学の専門家も交えながら、社会に今後生じてくると考えられる領域を見極めて研究を進めていくものです。

 自発研究ユニットは、若手?中堅研究者のリサーチリーブと研究環境整備によってトップ研究者へ育成しようとするものです。自発研究ユニットには、国際テニュアトラック教員として雇用する国内外の若手研究者、世界における知のフロンティアの開拓と新たな価値創造に貢献しうる研究構想を持つ学内の若手?中堅研究者を自発研究ユニットフェローとして採択し、一定期間、研究に打ち込めるようにしています。優れた研究成果を多数発表する若手?中堅の教員が出てくることを期待しています。

 本学の研究システムを運営していた研究戦略イニシアティブ推進機構は、個人、各種グループ、系、高等研究院に入っていない研究センター(共同利用?共同研究センターを含む)などの研究支援を行う基盤研究院へと改組します。学際的な研究グループを創成するためのインキュベーターが学術センターです。各研究センター、学術センターを支援し、高等研究院の支援対象のセンターへと昇格させるのも基盤研究院の役割です。

 研究支援の要点は、運営費交付金が増えないのでそれ以上の外部資金を調達することと、世界と戦えるように研究環境を整えることです。外部資金の代表格は、科研費です。研究者の皆さんには、基本的にあらゆる分野を網羅している科研費に申請することを強く求めます。また、それ以外の競争的資金に対しても、アンテナを高くしていただきたく思います。

 優れた研究を進めるためには、有能な支援者も必要です。部局からのURA等の配置要望が強くなってきています。教員、職員、専門職員を包含的に流動化して再配分することが必要なところまできていると考えています。また、これらのカテゴリーを超えて、ポジションを変えることができるようにするための方策が必要になると考えています。

開発/社会実装研究

 本学は、開発研究、実証実験、社会実装研究を通した社会への貢献を推進していきます。我が国の企業との共同研究及び大学発ベンチャーはseeds-driven型です。本学でも、シーズの社会実装のため、外部資金だけで運営される開発研究センターを設立しています。狗万app足彩,狗万滚球5(2023)年2月に発足させたトランスフォーメーションコネクト(Transformation CONNECT)機構は、AIから人工頭脳への展開、エネルギーや温暖化などに関する課題の解決、宇宙の利用やロボットとの共生社会の実現に向けた研究とそれによって発生する課題の解決、そのほか量子コンピュータや量子科学をはじめとして今後現れる未来型の課題に関する基礎?応用研究をIR?トランスIRを駆使して推進するとともに、産業化へ繋げるための司令塔です。

 他方、本学は、企業や社会のニーズから出発し、地域社会から地球規模までの様々な社会課題を解決し、より良い社会の実現に寄与するために、現実社会における実践に向けた開発研究を行うとともに産?学?官の壁を越えたneeds-driven型産学共同研究を推進しようとしています。本学では、そのために企業のR&D(研究?開発)研究所を誘致し、企業が、本学の人材や設備?備品を活用して開発研究を推進するB2A2B研究所を設立します。B2A2B(Business to Academia to Business)の研究のために、大学債により狗万app足彩,狗万滚球9(2027)年度の完成を目指してIMAGINE THE FUTURE. Forum(ITF.F)の建設に着手します。

 まさに企業や社会の課題を直接解決するための組織を立ち上げたいと考えています(筑波ガレージ構想)。課題に対して、T-REXあるいはオールつくばで、一定期間内に有償で解決策を返すというスキームです。このためには、企業ニーズとつくば地域の研究者リストが必要です。AIST発の株式会社AIST Solutionsがすでにこの目途に有用なオープンイノベーション特化生成AIプラットフォーム「Bibbidi(ビビディ)」を開発しているので、初期段階ではこれを活用するオプションも考えています。

 国際産学連携本部は、ベンチャーエコシステムを構築し、育成システムを充実させてスタートアップ創業数を増加させてきました。アントレプレナー教育からスタートアップの成長支援を経て資金が教育システムに還元されるエコシステムを強化し、スタートアップを増加させていくことを強く期待しています。特に重要な施策として行わなければならないのは、アントレプレナー教育の英語化、大学発ベンチャーの意見交換などのためのプラットフォーム(大学発ベンチャー同窓会)の立ち上げなどです。学生にとって大学卒業後/大学院修了後に、また教職員にとって、サラリーマンになるのか社長になるのかという選択があることは重要です。

 昨年9月4日には、アメリカのボストンCambridge Innovation Centerで、本学主催、在ボストン日本国総領事館後援で、3度目のUniversity of Tsukuba Night 2025を開催しました。世界のイノベーション発信基地であるボストンで、本学発ベンチャーと海外連携校であるCampus-in-Campus(CiC)校発ベンチャーが投資家に対してピッチを行いました。約450人の来場者で賑わい、ネットワーキングの面でも大きな成果がありました。本学は、今後もこのようなイベントを通して、大学発ベンチャーの成長を支援していきます。

エンゲージメントの強化

地域との連携協働

 エンゲージメントは、大学と多様なステークホルダーが互いに貢献し合うことです。本学が教育、医療、産業、文化などについて責務を果たすべき「地域」は、つくば市及び茨城県、並びに国際社会です。つくば市は、世界各地の科学技術都市に立地する研究機関、大学、企業等が集まる国際会議High Level Forumに参加する日本唯一の都市です。

 つくば市は、狗万app足彩,狗万滚球3(2021)年度末、我が国に二つしか認められていないスーパーシティ型国家戦略特別区域に指定されました。つくば市スマートシティ推進本部は、市長を本部長、鈴木健嗣教授をアーキテクトとして、多くのつくば内外の企業、研究機関などの協力を得て、革新的な暮らしやすさを実現する住民中心のスーパーシティ創成を目指しています。また、つくば市は、つくば市スタートアップ戦略を公表し、茨城県、大学、研究機関、民間企業等と協力して、つくばを中心としたスタートアップ?エコシステムの形成を進めています。

 本学は、国際産学連携本部のオープンイノベーション国際戦略機構を中心に、未来社会工学開発研究センターの参画を得て、データサイエンス?AIの活用とそのための規制?制度改革を推進し、様々な最先端サービスを地域社会に実装して未来都市を創り出すスーパーシティ構想の実現に向けて協働していきます。つくば市を実証実験フィールドに成長させ、つくば市の住民が科学技術のイノベーションの恩恵を感じられ、国際社会と密接に繋がっている街になることに貢献します。

国際戦略

 昨年10月1日から10月3日までの3日間、世界から産官学の優秀な若手人材らが集まり、社会と科学技術の諸課題について議論し、ネットワークを形成する国際会議である第4回筑波会議が開催されました。"Going into New Frontiers with Society(社会とともに新たなフロンティアへ)"をテーマに宇宙、頭脳、核融合、水素エネルギー、AI、グローバル?サウスなどについて議論が交わされました。著名な科学賞の受賞者との対談(若手、特に大学院生の参加が少なかったことは反省すべき点です)や、世界のさまざまな大学?研究機関の若手メンバーによる講演、ブラジル日本文化福祉協会名誉会長である石川レナト氏をお招きしたBrazil-Japan Partnerships: From Collaboration to Co-Creationなど、35件のセッション?イベントが開催されました。また筑波会議に合わせて、CiCの年次総会、海外同窓生ネットワークTUAN(Tsukuba Universal Alumni Network)の第2回総会及び交流イベントも行われました。

 本学は、大学の国際化によるソーシャルインパクト創出支援事業のタイプⅡ(海外展開型)に採択された3大学の一つで、文化や言語、専門分野の違いを超えて地域社会の様々な課題を解析し、海外大学の学生や自治体、企業と協業して未来構想を提案し、グローバルな環境の下でオリジナルな課題解決を提案できるグローバルスタートアップ人材の育成を目指しています。自分の技を磨くために各地を放浪する「武者修行」をコンセプトとして採用し、RUN-UP、HOP、STEP、JUMPの段階を経て分析力、異文化対応力、革新的思考力を養います。HOP段階は、日本人学生と留学生が一緒になって日本での多文化共修(GASSHUKU)、STEP段階は、CiCのパートナーであるフランスのグルノーブル?アルプ大学、台湾の国立台湾大学及び台湾成功大学、マレーシア工科大学、インド工科大学グワハティ校などの大学や海外企業での共修(DOJOプログラム)を実施しています。4つの段階の活動に応じたデジタルバッジを発行します。

 本学は、グルノーブル?アルプ大学とのダブルディグリープログラムを介してAir Liquide社と三者で共同研究を行っています。CiCシステムを活用し、[狗万app足彩,狗万滚球]-[重要な分野に強みをもつCiCパートナー]-[海外企業]の三者の共同研究を世界各国に拡張したいと考えています。この方式には、企業を探す観点から、CiCパートナーが繋がっている企業の情報が得られる利点があります。世界12カ国に設置した狗万app足彩,狗万滚球の海外オフィスを中心に、現地のニーズに対応する共同研究を開発していきます。

 急速な少子化を考慮すれば、留学生をもっと増やしていく努力が必要です。現地の大学のみならず中等教育機関への働きかけなどを通じた優秀な外国人学生のリクルートを考えなければなりません。昨年度から、広報担当、教育担当、学生担当、国際担当、研究担当の副学長からなる留学生獲得推進会議がさまざまなアイデアを提案しています。企画立案だけではなく、教育推進部、学生部、国際局及び各教育研究部局の有機的な連携によって企画を実行していくことが必要です。

 国内外の優秀な研究者を獲得?育成し、国際的な頭脳循環を加速するため、国際テニュアトラック制度、海外教育研究ユニット招致プログラムも引き続き進めていきます。これらは、国際共同研究の強化や国際共著論文の増加などの成果を上げ、国際的なレピュテーションの向上に繋がります。

 各種の世界ランキングの指標で大きなウエイトを占めるのは、研究者及び雇用者のレピュテーションです。本学のレピュテーションは、研究者からも、雇用者からも、本学の実力をかなり下回っています。教員の皆さんの研究?教育に対する自己評価は高いので、その通りであるなら、国内外の研究者や雇用者からもっと高く評価されてよいでしょう。知り合いの研究者や雇用者への働きかけにもっと協力していただき、本学のレピュテーションを上げましょう。

 こうした本学の国際化、国際性の日常化の取り組みを進めつつ、本学は我が国の高等教育の国際化を牽引する覚悟を持っています。本学が支援して設立された大学の国際化促進フォーラムJV-Campusはその一つです。2022年3月の公開後、英語で学習可能なコンテンツを600以上配信し、世界180ヵ国以上から25万人を超えるユーザーが利用しています。今年度以降、各大学から、単位の取得やマイクロクレデンシャルの付与がなされるコースも公開されていく予定です。

 CEGLOCには、「国立大学システム」の日本語?日本事情教育を担い、この分野を設置することが困難な国立大学等の留学生の教育を支えてもらいます。JV-Campusのホームページでは、本学及び東京外国語大学と大阪大学を文部科学省が認定している日本語教育拠点である旨が記されており、広く日本語のお世話をする気概の見える化がなされています。今後、CEGLOCには、他の拠点と協力し、また全国大学の日本語教師とも協業して、留学生の日本語教育を先導することが期待されます。日本文化に関する教育については、本学芸術専門学群と東京藝術大学美術学部の間で話し合いが始まっています。ちなみに、国大協でまとめた国立大学の将来像の基をなすのは、85の国立大学を総体と捉えて課題解決を図る「国立大学システム」という考え方です。留学生を増加させるための課題(リクルート、マッチング、日本語?日本文化、就職、中央と地域の違いなど)、教育の共有、研究の相互支援などにおいて、総体で解決を図っていきます。現在、関東甲信越地域の国立大学(国立大学協会の関東?甲信越支部の大学:千葉大、横浜国大、埼玉大、群馬大、宇都宮大、茨城大、筑波技大、山梨大、信州大、新潟大、上越教育大、長岡技科大)の共同国際化活動に資する方策を企図しています。

附属病院

 本学の附属病院には、高度医療の実践や医療技術の開発という大学病院としての使命と、茨城県唯一の特定機能病院としての先進研究に基づいた地域医療の使命があります。光熱水費や業務委託費、人件費の増大によって国立大学病院全体が赤字になる中、今年度の診療報酬が改定で3.09%引き上げられたことは歓迎すべきことです。今後、医療従事者の労働環境と教育?研究?診療機能を改革し、ステークホルダーとの協働により附属病院の社会的価値を高め、経営効率の改善を進めていく必要があります。

 高度先進医療に関しては、超先端的医療研究開発拠点を形成し、データサイエンス?AIなどによる研究開発基盤を構築して、最先端医学の研究成果の社会実装に向けた共創の場を確立する必要があります。高難度手術を増やせる体制を整備し、二次医療圏の中核病院を網羅した広域連携?搬送システムの新規構築により急性期拠点機能を最大化して利益率を高め、効率性?複雑性指数を含むDPC 係数(医療機関別係数)の上昇を図ります。陽子線治療や睡眠ドック等も強化してきています。附属病院は、1983年に世界で初めて垂直ビームによる臨床研究を開始し、小児がんを含めて8,000人以上の治療を行ってきました。昨年8月、国内外の陽子線治療の研究、教育、治療の拠点として陽子線治療センターの新陽子線治療棟を開所しました。小さなお子さんも安心して治療が受けられる環境にするため、ディズニーのキャラクターを施設の壁面に取り入れています。

 附属病院は地域医療の中核としての機能を有し、県内の医療を先導する立場にあります。また大学の附属病院は、臨床及び基礎の医療に関する研究の実践の場であり、研究力をもった医師、医療関係者を育成すべき義務を負っています。

 国立大学の附属病院には、格段の研究力が求められています。狗万app足彩,狗万滚球つくば臨床医学研究開発機構(T-CReDO)を中心に展開されている臨床研究を推進し、ワクチン開発研究や創薬研究で発展を目指す臨床研究中核病院に認定される必要があります。地域医療人材育成に関して、茨城県内9地域に一つ以上存在する地域医療教育センター、その周囲に点在する医療機関を、附属病院をハブとした臨床研究?予防医学研究ネットワークで結び、地域包括ケアシステム機能も併せ持つことで、少子高齢化や過疎化に即した地域医療システムを再構築していきます。

附属学校

 附属学校は、小学校?中学校?高等学校、並びに、視覚、聴覚、知的、肢体不自由、知的障害を伴う自閉症等に対応する特別支援学校で構成され、多様な学びのコミュニティを有しています。これまでの実績に驕ることなく、不断に教育システムと教育コンテンツを革新し、我が国の初等中等?特別支援教育を牽引すること、特別支援に関しては、本学の研究者が現場の事情をよく理解して障害を克服するために協働することを期待しています。大学と連携しながら、学校教育機能の向上を図る研究を進め、その成果をもとに、全国及び地域における初等中等?特別支援教育並びにグローバル人材育成教育を先導し、インクルーシブ教育システムを構築してほしいと考えています。附属学校では、インクルーシブとグローバルを統合した新たな概念インクローバル(IncLobal)を掲げます。インクローバルとは、一人も取り残さない包摂性(Inclusive)に、地域と世界を双方向に繋ぐ広がり(Global)を融合させ、多様性を価値創造に繋げる教育的アプローチです。朝日新聞DIALOGのシリーズ企画「声の力」プロジェクトにおける視覚特別支援学校の生徒と附属高校の生徒による実験的ラジオオーディオドラマ「ラスボス」の制作などは、極めて先進的な試みの一つです。附属学校群の活動については、地域的な観点、校舎の建て替えなども含めた財政的な観点などから、より支援的な方策を考えていく必要があります。

 附属学校は、JV-Campusを活用し、科目等履修生制度の枠組みを活用した高大接続科目等履修生制度を利用した国内外の高校生向けの「大学の学びの先取り履修制度」により、大学との連携教育も進めています。高校生の課題解決型学習への関心を喚起し、優秀な学生の大学早期卒業を可能にしようとするものです。今後、「先取り履修制度」を全国の高校に利用してもらえるよう、各学類?専門学群の協力を望みます。

同窓会等のネットワーク化

 昨年度の台湾校友会で目撃した卒業生?修了生たちの、本学に対する思いに胸が熱くなりました。台湾のみならず世界中で頑張っている者を考えれば、大学は期待に応えていかなければならないとの思いを強くしています。第4期中期目標には、淡々と「ステークホルダーに積極的に情報発信を行うとともに、双方向の対話を通じて法人経営に対する理解?支持を獲得する」と書かれているにすぎませんが。

 同窓生(附属学校を含む。以下同じ)は、重要なステークホルダーです。同窓会の存在によって、同窓生にとっては、大学の動向や各種情報の入手ができ、親睦を深めることが可能になります。在学生にとっては、同窓生への就職?キャリア相談などが可能になります。運営費交付金の「成果を中心とする実績状況に基づく配分」の「大学教育改革に向けた取組の実施状況」の一つに、学群?大学院とも、「卒業生(修了者)に対する追跡調査の組織的かつ継続的な実施」、「卒業生(修了者)に対する追跡調査の結果をデータベース化し教育改善に繋げる組織的な取組の実施」がありますが、教育組織にとっても、同窓生の情報を一元的に集約できる利点があります。

 本学には、茗渓会や校友会、図書館情報学橘会、桐医会のほか、学類?専門学群や大学院の学位プログラム、学生団体、附属学校などの同窓会組織があります。まだ同窓会組織がない学類や大学院学位プログラムにも同窓会組織をつくるように呼びかけています。2023年10月には、世界中で活躍する卒業生?修了生を繋ぐTsukuba Universal Alumni Network(TUAN)も発足しました。実際、TUANの協力を得て、昨年はベトナム、台湾、米国、カザフスタンなどで同窓会を開催することもできました。

 これらの同窓会組織の自主?自律?自治を尊重しながら、在学生や保護者?PTA会、紫峰会、筑波みらいの会、学長を囲む会、名誉教授の会、筑峰会など、様々なステークホルダーを含めたネットワーク桐の葉Togetherコネクトを発足させています。既存の同窓会組織等の代表には、狗万app足彩,狗万滚球6年度より本学の情報をお知らせする「TSUKUBAからの風だより」を定期的に配信していますが、まだあまり認知されていないのが残念です。本学としては、既存の同窓会組織等の会員名簿の提出は求めませんし、それらの会員に本学から直接の発信も行いません。双方向の対話ができるように、各教育組織と同窓会との協力関係の構築をお願いしています。

 卒業生?修了生とのエンゲージメントを確立するため、今年2月20日に狗万app足彩,狗万滚球を愛する人たちの交流の場「第1回KUTTUKUba」を東京キャンパスで開催しました。このような繋がりを確認する場を設けることは重要です。ホームカミングデーも、対象者の拡大や在学生の参加などを含め、その在り方を抜本的に見直し、エンゲージメントを深められるようにしたいと考えています。

 また入学時又は入学前から卒業後まで一貫して同じ生涯IDで本学からサービスを受けられるようにすべきだと考えています。生涯メールアドレスを付与しても活用されなければ意味がありません。若い世代にとって、電子メールは情報を受け取る手段としては役に立たなくなってきています。昨年度も書きましたが、メールアドレスではない生涯IDと個人を紐づけ、卒業後も生涯IDを通じて卒業生?修了生に本学から情報発信ができ、卒業生?修了生と本学とが結び付く体制を構築する段階ではないでしょうか。

大学経営の高度化

経営機能と教学機能の強化

 本学は、文部科学大臣より国立大学法人法第21条の9第2項に規定する準特定国立大学法人に承認され、昨年11月、運営方針会議を設置しました。本学は、法人の経営に関する重要事項を審議し、過半数が学外委員の経営協議会をほぼ毎月開催しています。運営方針会議も、学外有識者が過半数を占め、中期目標?計画や予算?決算、事業報告書、財務諸表などを決議し、それに基づいて法人の運営を指導し、運営が適切に行われているかを監督する機関です。

 運営方針会議の設置と同時に学長直轄の大学経営推進局を学長室に改組し、また教育研究に係る基本方針を企画立案する理事(プロボスト)を置きました。学長が経営の責任を有するのに対して、プロボストは、学長のリーダーシップの下、教学の機能強化を図る存在です。副学長の所掌を横断する新たな業務に取り組み、プロボスト室会議を通じて教学関連を担当する副学長を統括しています。加えて、教学マネジメントに関する視点から、教職員のマインドセットの変革を誘うことをお願いしています。

 マネジメント上、研究費不正と各種コンプライアンス事案は非常に重たいものです。域を設置し、域長を配置した理由は、研究力強化とこれらのリスクの低減のためです。研究費不正防止のために事務処理に自動化を導入し始めました。現在採用しているシステムは、日頃と異なる発注、あるいは学術的ではない物品などの注文はチェックできていて、その都度、責任者=域長に確認することとなっています。AIを進化させて、これをより完全なものにしたいと考えています。コンプライアンス事案は、究極的に人同士の問題です。マハティール氏の夢であり、嘉納治五郎先生のお言葉にある他者への配慮が十分になされるように各組織が組成され、運営されることを願っています。

 事務処理のDX化を進める計画を昨年度末に公表しました。秘匿性が高く、本学の誰もが使えるAI環境整備が基本です。また、全ての部局、部課の協力が必要であることを強調しておきます。

事業?ファイナンスの強化

 教育及び科学技術への投資は、国家の成長にとって最も有効なものです。国立大学の基盤は運営費交付金です。高市早苗内閣の決断により、今年度予算案では運営費交付金が対前年度188億円増の1兆971億円となりました。法人化以降、削減か据え置きが基調であった運営費交付金が9年ぶりに増額されたことは歓迎すべきことです。ただし、運営費交付金によって、大学の教育?研究にとって十分な額が確保されるわけではありません。狗万app足彩,狗万滚球6(2024)年度の本学の運営費交付金収益は約354億円で、経常収益(約1,096億円)の32%を占めるにすぎません。本学が、外部資金等の獲得によって多くの収益を上げていることを示しています。本学の支出の年成長率は約2.8%で、RU11(Research University 11)中、第2番目に位置しています。今後も財源の充実?拡張が重要であり、大学が持てる資産を効率的に運用する方策も必要です。

 多様な財源を確保して継続的に財務基盤を強化するため、金融市場の動向などに関する事業?ファイナンス局を統括する事業?ファイナンス担当理事(CFO; Chief Financial Officer)および副学長(資産運用担当)?CIO(Chief Investment Officer)を昨年度の途中に配置しました。また本学は、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)と提携して「金融と知」の協業を進め、大学経営の高度化を支える体制を構築しています。

 事業?ファイナンス局の下には、金融手法の高度化による将来に向けた大学の資産形成と運用収入の拡大をミッションとする資産運用?ファイナンス室と、事業収入及び寄附金収入等の獲得による運用原資の拡大とリレーションの強化をミッションとする事業?リレーション推進室を置いています。両室が緊密に連携して資産形成を行っています。

 事業?ファイナンス局の重要な責務は、大学の資産を運用により拡大していくことです。加えて、教育への社会からの投資を増やすことです。研究への投資は、研究により解決する課題が鮮明であれば、社会から理解が得られやすいところがあります。一方、教育はその成果が目に見えるまでに時間がかかるとともに、個人レベルでの個々の問題もあり、宗教的な背景や慈善活動の社会認識が諸外国とは異なる我が国では、教育への投資を呼び込むのはかなり困難な課題です。教育への投資の例としては、デジタル教育に教員が足らない状況で、産業界で働く博士の学位を持った方に教育に参画いただくことです。寄付講座はこれまでも受け入れていますし、講座をつくるまでもなく企業側のニーズに合わせたプログラムを企業側のご負担で開設することも実施しています。今後も、多くの企業と協働していきます。

 来年4月からは留学生の授業料を、正規生は年間73,000円、非正規生は年間36,000円引き上げます。これは、国際競争力けん引学部等に認定されるための条件でしたのでやむをえないことですが、増収分は、日本での就職を希望する留学生のキャリア相談の体制強化や、オンラインで手続きできる在留管理システムの導入など、留学生の教育?生活環境の充実に向けられます。

 学生宿舎の寄宿料の値上げを予定しています。物価高や維持管理費の上昇などで収支が悪化し、昨年度、約1億円の赤字を出してしまい、値上げをしないままであれば、今後毎年約4億円の赤字が発生することになり、宿舎を維持できません。周知が遅れたことで混乱を招いたことは残念ですが、共修の場所としてのレガシーを持つ宿舎の存続のためであるとご理解いただくしかありません。

 留学生以外の授業料の値上げについては、大学教育の受益者は、学生本人はもとより、その学生が将来支える社会であるという考え方の上に慎重な議論が必要であると考えています。運営費交付金や外部資金では対応できない大学の活動(卒業生?修了生とのエンゲージメントなどを含む)については、教職員のこれらの方々への思いを寄付という形で集約すべきではないかと考えています。

 学生の経済支援も、給付、貸与などの一方通行ではなく、あるいはTA/TF/RAという形だけではなく、学生に大学の活動に参加いただきその対価という形で受けていただくことが重要だと考えています。学生が様々な学内用務をこなすことができる形態の組織ができることを期待しています。

おわりに:学際的な研究?教育の推進

 なぜ我々は、100m走の紙一重の勝負に、体操の難度の高い離れ技に、サッカーの超人的なシュートに、あれほど感動するのでしょうか? カメラやセンサーからの情報をAIが解析して物理的に装置を動かすフィジカルAIを搭載したヒューマノイド(人型ロボット)が、これらの競技に参入し、人間に勝利したとして、我々はそれを見て称賛するでしょうか? AI同士の囲碁や将棋を見て、我々は楽しいと思うでしょうか?

 おそらく少なくとも現段階では、ヒューマノイドが、スポーツやゲームで人間の能力を超える力を発揮しても、我々は感動しないでしょう。我々は、人間が全知全能ではなく限界を持つ生命体であることを知っており、肉体や精神の限界のギリギリのところまで自らの可能性に挑戦している姿が見る者の心を捉えるのであって、人間の及ばないところを超えるように設計されたヒューマノイドには克己心や挑戦心を感じ取ることができないからです。そこには、我々の心の中に、人間と非人間との違いがあるという前提があります。

 しかし、我々は、人間でなくても、犬やネコ、小鳥といったペットを家族同然に可愛がります。ヒューマノイドが、一人ひとり(?)の名前を持ち、個性を持ち、感情を持ち、友情や絆、信頼が生まれたとしたら、どうでしょうか? 心優しい科学の子?鉄腕アトムは、テレビアニメの最終回で、人類を救うために太陽に突入して地球に戻ってはこず、その姿に胸を打たれました(後日譚はありますが)。信頼できるヒューマノイドであれば、我々は、それを人間と同じようなものとみなし、それに対して感情移入するようになるでしょう。AIの発展は、人間と非人間との境界を不分明なものにしており、人間とはいかなる存在であるのかを問い直しています。現在のAIが得意とするrecognitionと現在のAIにはまだできないcognitionには違いがあります。我々はAIを利用して、また新たな経験と知識の構築によりrecognitionを高め、加えて想像力=imagination豊かにオリジナリティ溢れる創造力=creativityを鍛えてcognitionのポテンシャルを高めていくことこそが、人であり続けることや人がすべきことを見出す糧となるのではないかと考えています。

 人文社会科学や人間科学が今後、果たすべき役割は大きいと考えています。昨年、本学が人文系を軽視しているという誤った伝聞を基にした記事が大手新聞社の紙面?ネット配信で報じられました。本学は、学問領域の壁を低くし、異分野の研究者が協働することを大きな理念の一つに掲げ、「文理協働」といった、文系と理系、それぞれの研究者による協力と調和を目指しています。"文理を俯瞰した学び"をモットーとし、文系の学生が理系の講義を履修することや、その逆を必須とする独自の教育課程を長年進めてきました。非自然科学系と自然科学系の教員比率は、旧帝国大学が1:5程度であるのに対して、本学は1:2です(2021~23年平均)。時代の変化や学問の発展に応じた教育組織の不断の改革と新たな学問領域の開拓は求められますが、本学が人文系を軽視しているというのは誤解です。

 本学は、気候変動、自然災害、戦争、格差と分断、貧困、食料?エネルギー問題、パンデミック、生物多様性への配慮などの地球規模課題の解決に向けて、教育?研究によって世界に社会的なインパクトを生み出していきたいと考えています。一方、もう一つの地元であるつくばの未来も本学の在り方とオーバーラップする部分が多いと感じています。すでに述べたように、科学技術の恩恵を感じられる街づくりに、その先頭で、T-REXとともに貢献したいと考えています。日本の科学技術力の発展に欠けているピースの一つは、関わる者の多様性ではないでしょうか。つくばを家庭?初等?中等?高等?院教育のモデル地域に変えていきながら、これまでの受験の形に変革をもたらし、science-nativeな女子を育てる夢を現実にしたいと考えています。

 組織体が力を発揮するのは、構成員が大きな方向性を共有する時です。本学の未来は、つくばの、日本の、世界の未来に繋がっているとの思いを持って、皆様と改革を進めていきたいと考えています。